焚火の話
その昔。
キャンプと云うよりはツェルト(天幕)とシュラフ(寝袋)だけのビバーク(野宿)的な渓流の夜を多く過ごした。
野生動物や不可思議なざわめきに怯えながらも、自然と云う万象と一体感を味わえるコトにシアワセを感じていた。
山際に挟まれた広大でいて狭い星空。
光が一切生まれぬ漆黒の闇。
人工物の光源は燃料が切れるか故障するガラクタ。
暗闇の中、唯一信頼できる光源は焚火であった…
身を守り、照らし、優秀な調理熱源、優しく身体を包む暖房。
そして友の顔を照らしつつ酒を酌み交わす夜に 言葉のいらぬ会話の聞き役…
始まりは盛大な焚火だったが、
回数を重ねる毎に
いつしか必要最小限の火に落ち着いた。
竈を組まず、風を読み、空気の流れを作り出し薪を操作すると
思い通りに操れる生き物。
自然界だから毎回条件が異なる。
風 雨 雪 乾 寒 。
長年渓流に係わっていると、大抵の条件下で火を熾せる様になった。
影響が大きかったのは 渓流釣りの師匠の存在。
薪の探し方、条件に合わせた床と組み、乾燥過程、抜き差し、読み、
火を熾すに必要な三大要素をその背中で教えてくれた 釣号を「仙庵」と云う師はまるで仙人のようだった…
仙庵の作り出す焚火は何時の時も芸術品であり続け、ボクの眼と心を癒してくれた…
秋になったら単独釣行し、原点回帰の旅に出よう。
全ては其処から始める…