闇 照らす夜に 其ノ四
メシを作って喰らう
イワナとヤマメの塩焼き...
焚火で炙り、じっくり焼き上げる
その工程の中で、一本見つけておいた桜の流木を焚火に差し込み
その煙をかける。
飴色の仕上げには欠かせぬ
たっぷりと時間があるので
じっくりと焚き火に手間を掛けてもらうコトとし
その間、バゲットをカリッと炙り
ジェノバペーストを塗り付け齧る
案の定、忘れモノだ
バターナイフ...
こんなものは無くても良かった
直接バゲットをパテに突っ込めばコトタリル
しかし、とても楽しみにしていたキャンプだ
上品にワイルドで行こう
腰の日本刀のような鉈でバターナイフを作る
キャンプに連れて行ってくれるなら
肉を喰わせろ!
相方のみかんがそう云うモンだから
今日は特別、仙台牛のハラミ肉を炙る
先程の桜の枝に金串を刺し
これまたじっくりと焼く
焚き火は熾きになっていて
火力は強く、しかし
遠赤外線効果で
外側はパリッと焼け、桜の煙りを纏い
内は温まったミディアムレア状態
ベストである。
が、
ボクは肉汁の染みついた葱を喰うばかりで
コヤツがほとんどの肉を喰いやがった
まぁ、
夜通しテントの横で番犬をさせるのだから
これくらいの報酬は...
日中は汗をかくほどの気温だったが
日が落ちるとやはり肌寒く
山奥となればなおさらであった
三元豚と野菜のポトフで身体の中を温める
に、しても
作り過ぎた...
3-4人前はあるだろうか
翌朝に作る雑炊の分
ソレを考慮しても多すぎる
ボクはどうも、
一人分
という料理の作り方を知らぬらしい
コヤツが今日の、なんとも情けない相方だ
テントを張り、焚火をし
飯も喰らい、
さぁ、寝るか...
と、いう時になって
また
である...
闇の森に向かって吠える。
一声だけ吠える。
吠えるのだ
前回もコレだった
今回も全く同じである
シュラフに潜り込み、無視して寝ようとしても
数分置きに吠える...
その間、妙に落ち着きがなく
アッチコッチに神経を尖らせ動き回る
闇に恐怖を感じ、吠えるのか、
ナニかの気配を感じ、吠えるのか?
とても弱虫な犬である。
どうにもうるさいので車の中に入れてやると
落ち着いたようで、すぐに鼾をかき始める
どっちゃにしろ、ウルサイのだ
今回も車中泊...
二連敗である
渓流釣りを始めた時から
何度となくキャンプやビバークを経験してきた
しかし、
独りきりは無かった...
コヤツのせいにしてはいるが、
きっと独りでは闇の中に身をおいていられぬだろう
だからこそ、連れてきた
ボクも弱虫なのである。