妄想

今日は初冬の、澄んだ空の下
お気に入りの渓流に出向き、河原の落ち葉の絨毯の上に
マットを敷き、シュラフに包まりながら過ごす

横にはほど良い太さの流木で
こぢんまりとした焚火が燃えている
先ほど串に刺して 遠火の炙り焼きになっているのは 岩魚だ
この時期、渓流は禁漁期に入っている
炙られているのは 以前釣って冷凍しておいた岩魚なのだ

この岩魚はある特定の場所の岩魚だ
体色は黒っぽく、斑点が小さい
所々にくすんではいるが、オレンジの斑点が...
この岩魚を何故冷凍保存していたか?というと
この日の為に...

今日は 今年最後の休日なのである
禁猟期ではあるが、今、渓流の水はとてもクリアなので
その横で大自然に抱かれながら
最後の休日を心ゆくまで満喫するのである

そして、なくてはならないもの
【すこぶる美味い岩魚】なのである

予想される同行者の友人の分もとっておいてある
しかし月曜とあって、さすがに同行者はいない
独り占めではあるが、とても寂しい
みんなとしっぽりと焚火宴会をしたかったのに...


岩魚がいい塩梅に煙で燻される間
シュラフに潜り込む
羽毛の特性により、即座に 温かく私の身体を包む
少しだけブナの木に残っていた 落ち葉の落ちる音を聞きながら
文庫本を読む
外気温の 凛 と張った空気と
シュラフの温もりの温度差が心地良い
本は読み進まず、うつらうつら...
渓のせせらぎの透明感のある音で僅かに目を開けると
澄んだ空に雲の流れが速い
山々と木々によって 狭まった空がより鮮やかに映る
そしてまた...

そんなことを繰り返すうちに
岩魚が焼きあがったようだ



・・・雨・・・
そんなボクの今年最後の休みを...
やってくれたな!
くっそ〜
ホントだったら今頃...


とても残念だが
この文章を書いているうちに
なんか癒されてきた?
そんな気がする 雨の休日

心残りは冷凍のすこぶる美味い岩魚だ...