拝借



グランドメニューのメニューブックを新しくするために
お袋の大切にしている 筆と硯を借りる

掲載するのは小さい字だが
はじめから小さい字では書けないから
大きな字をスキャンして縮小する

字は、特に筆字は
大きく書かないと味が出てこないような気がする

学生時代、高校になってからというもの筆など持った事はなかったが
この仕事に就いてからは
献立
というものを書かねばならず
ペンでは味も出ないので、筆を持つことになる


若い頃のボクはラブレターをいくつも書いた
好きな娘に宛てていくつも書いていた
ヘタクソな字で書き綴ったのだが、相手はきっと読めなかったに違いない

学生の時は、自分の字も読めないほどで
唯一の解読者は親友だけだった

小・中学は授業に習字があり
冬休みの課題は決まってお習字であり
お袋を騙しては清書させ、それを提出していた

しかし、人間というもの
必要に駆られると否応無しに対応しなければならなくなる

例の通り、自分の性格が災いして
筆ペンではなく毛筆に...

あぁ、ちゃんとお袋の云ったように
習字教室に通っておけばよかった

そんなことを呟きながら数年経った


お品書き は沢山の人の目に触れる
基本も何もなっていないボクの字を
晒すにはツライ

一度はメニューブック専門の業者に依頼したが
どうにも字体が店の雰囲気と合わず
結局は自分で書くことになるのだが...

出来上がりはいつの事になるのやら