煮穴子の蕪蒸し




全てが、口の中でほどけてゆく

そんな 儚い料理...

穴子も柔らかく炊いて、少しだけ味を強くし
すりおろした蕪と卵白が合わさり、融合し
ふわふわの蒸し上がり

昆布の旨味を、純米酒を媒体として
美味しい豆腐に染み込ませる

濃い鰹出汁に、薄く当たりを付け
全体を纏めつつ、滑らかに包む



ボクの仕事は形に残らぬ、元々儚い仕事で
食べていただいた人の脳と舌に
かすかな痕跡の感覚だけを残す...

そんな、
一瞬だけの仕事なのである



やはり、
仕事の存在感として
僅かでも残っていてほしいから
一瞬も気を抜けない

ボクのボーダーラインは其処にある

窮めようとして、アヤフヤで
グラつきが多い



ボクが自身で設定する、ボーダーは
足を踏み外すためにあると云っても過言ではない...

踏み外すコトによって

気付き
震え
高ぶり
脅え
自分に憤慨し
奮闘し
さらに登る

しかし、
ボーダーは後を、急ぎ足で付いてくる



ある時、気付く

草臥れちまった時には
ヤツも停滞するようだ...


けったいな仕事に就いたモンだ

ややこしく、偏屈な
自分の性格に嫌気が差す





今夜は、ボーダーラインの上で寝るコトとスル。