嵩み
例えば・・・
秋刀魚を捌く
軽いタッチで鱗を引くのは、身が柔らかいから。
頭をカマ下から落とし、内臓を取る
内臓は胃袋の中に(胃は無く、全てが腸なのだが、ココは胃袋としておく)溜まっている鱗をしごき出すのは、
肝醤油にする時に鱗が残っていると口当たりが悪いため
苦味の胆嚢と腎臓の血合いを取る。
骨に付着している血合いを、塩水の氷水で洗う
水気を拭き取り、三枚におろす
先ず、下身から
半身をおろしたら、そのまま頭の方を左上にし、斜に置く
もう半身もおろしたら、下身と並べて尾を左上に置く。
そのままの状態で両方、腹骨をかく
この時の位置付けは、身を動かさずに腹骨をかくため
予めその位置に身を置くコトである
腹骨を掻いたら、尾を右に並べ置く
ぺティナイフを使い、皮を引くのは刃が薄いから・・・
身に負担がかからぬ様にするためである
尾から引く為、尾を右に並べ置いたのである
この時、肝に味付けを施し、火にかけるが
味付けの中には、酢を少しばかり入れる
コレは身を酢で〆たり、鮨にする際、
肝醤油の中の少しばかりの酢が媒体となり
合わせた鮨飯と良く融合しながら、味に一層の一体感を出すため
酢の種類は其々である
ボクはバルサミコ酢
理由は伏せておく
皮を引いたら経木の上に並べ、
酢で〆るものは薄塩を当て、後に昆布の入った米酢で数分〆、炙る
造り用は、小骨を抜かない
小骨を抜く作業で、身にいくらかでも負担と傷が付くのを良しとしないため
小骨はそのままだと、口に残ったり触ったりするので
頭の方から削ぎ切りにするのと、細かく隠し庖丁をし、骨を細かく切る作業と
造りに切る作業とを同一化する事で、二通りの庖丁した刺身を
小骨を気にせず食す事が出来る
頭の方から削ぎ切りにするには訳がある
小骨のむいている方向と逆に包丁を入れるためである
小骨はどちらに向いているか?それを考えれば答えはすぐに出る
その作業が終わる頃、
肝醤油が沸騰し、生臭みも消え
氷水で一気に冷やす
秋刀魚の油はゆっくりと冷やすと、また生臭みが復活するためだ
この一連の工程には
全てに訳がある。理由があるのだ
別に多少身に負担が掛っても
傷がついても、
秋刀魚の刺身としてなんら通用するであろう
しかし、
考える限り、出来る限りの仕事をしてやることで
多少なりとも味に変わりが出てくるものである
それをするのとしないのとでは、作った本人が違いに気づかぬのである
身に負担を掛けぬのも、味付けも、
工程の効率化も、時間も
考えて、尚且つ早くなければならぬのは
数をこなしただけの技術の向上にもよる
早く仕事を終わらすことができれば
また次の考えが浮かんできたり
山の様な仕事にいち早く取りかかることができる
休憩も多く取れるかもしれぬし
それが嵩み、無くてはならぬ遊びの時間が多くなる
秋刀魚1箱を、身が冷たいうちに全ての工程を終わらせれば
それに越したことはない
事には全て、理由があるコト・・・
白いものは白、
黒いと言われれば黒
そう云う業界の教え方が、その昔は当たり前だった
何故か?
其処に疑問を持ち、解明し
実施し、納得しつつ、新たの可能性にも目を向け
尚、実施し研究する事こそ
物の本質を掴む 唯一の道であると・・・
ボクはそう考えるのであった
自分でもイヤになる。
さ、
自転車でも走らせて
イヤになった自分を掻き消そう・・・