料理の背景
喪中挨拶の葉書を見て、母に線香をあげに来てくれたのだ。
彼は武骨な男で、己の道を鮨に捧げたのだが十数年後転職した。
今は飲食とは全く関係のない仕事に就いている。
その彼が手土産に持ってきてくれたのは、自分で焼き上げたチーズケーキであった...
料理を作る職人がその道を諦め、家族を養う為、生活を続ける為に選んだ道。
しかし手に、身体に残っている料理と云う仕事が彼に料理を作らせている
そう思わされる程のチーズケーキであった...
鮨の職人がお菓子を?と思われるかもしれない。
しかし料理を作るっていう事実にはジャンルなんて存在しないもの
自分が手掛け、作り出す物に納得し、食べる人に喜んでもらえるだろう想いで料理は成っているのだから...
深夜
彼の作った料理を食べながら
彼の背景を想う。
朝から深夜まで一生懸命働く彼の胸の内が沁みわたってくる味だった。