蒲焼き


天然鰻を蒲焼きにする。

身が柔らかい上に、皮もトロトロ寸前であり、
身が厚い分質量も通常の蒲焼きの3倍以上はあるから
串から落ちそうになる。

鰻自身の脂とタレが炭火に落ちて

ジュッ
ジュジュッ

と、煙がまとわりつく。
これが炭火の良いところだ。

炭の持つ遠赤外線放射熱と、旨味の液体を弾く時の煙を放つ効果。
そして、この香ばしい香り...

天然物は養殖のそれと比べ、かなり高値である。
希少価値もあり、高嶺でもある。
それにもまして、極太だから
同じ面積でも、厚みと質量が何倍もある。
キロ単価でいうと、一人前の量がかなり高くつくのである。
だから、売値も多少お高くなる。

いかん、いかんと思いつつも
この香りを嗅ぐと我慢はできない。
うなぎの蒲焼きを目の前にし、
アノ、鼻腔を通して脳と胃袋に直接訴えかける香りを嗅げば
も、喰らうしかない。

おっきな丼に銀シャリである。
それに頭と骨から取ったエキスの甘辛タレである。
そこに丼からはみ出るくらいの天然鰻蒲焼き炭火バージョンである。
オマケに、実山椒の佃煮である。

いざ、目の前にある うな丼 よ...1年ぶりだな。
よしよし、いま喰ってやる。

箸を入れると、音を立てるように ホクッ と、
美味そうに焼き目が付いて パリッ と、して剥がれ落ちそうになっている皮の、なんと愛しいことよ。

ああ、旨い...

も、丼になったうなぎを見て写真撮るのを忘れてしまうほど
この丼は、ああ、旨い...