スカウト

漁師のところで牡蠣をワイヤーブラシで洗っていると
体格の良いばーちゃんがノッシと大またでやってきた。

おぅ、ワケーの、オラにカキッコいづつばり剥いでけろや。
と、えらそーに頼んだ。
私は、それでも アイヨ! と快諾し、自分の分の牡蠣を剥き
ホイ、どーぞ...
ばーちゃんは私の牡蠣の剥き方を ジィッ と観察していた

5個をペロッと口に入れ、殻に残った汁を啜りながらも、私をジッと見つめている。
おぅ、アンチャン、なかなか剥くの早ぇーな、ちれぇーに剥いとる
おぅ、アンチャン、オレの剥き場で雇ってやっから、明日からございん。
も、ちょべっと練習すたら、も、ちょべっと早ぐなっぺべさ。

私が苦笑いをしながら困っているのに、漁師は黙って笑いを堪えてる
いや、あの、その...
ジツハ、ワタシハ...

なーんだべ!おどごらしぐねぇなや!ちめっときは即決すねば、おどごでねど!
そこで、漁師は助け舟を入れてくれた
網元でも、牡蠣剥き場の経営者でもない
私は、ただの牡蠣剥き場に雇われているばーちゃんにスカウトされた

漁師が私の素性を話して聞かせたが、娘の婿に来ないかと...
それも丁重にお断りすると
孫娘の婿にと...
終いには ばーちゃんの といわれそうで、スタコラ逃げてきた。

昔は漁師系の方達にスカウトされることがあったけど
この歳になってもとは...