彼岸ふぐ

お彼岸が近くなり
この河豚の名の通り
市場や漁師のところに水揚げされはじめた


朝〆て、夜に食すのはちょっと早い
翌日まで寝かせた方が旨みを増す

しかし、一年ぶりの味を確かめたいがため
試食する


鉄刺も良いが
今回は叩きにする

薄塩を当て、表面を強火の直火で炙る

身はギュッと締まり
プリプリの食感となる

ポン酢を回しかけ一枚づつ...
鉄刺より厚めの削ぎ切りにしたので
歯ごたえも、独特の繊細で上品な味わいもより強く確かめられる

養殖のトラ河豚よりも美味い
そう断言できる河豚


河豚と言えば「テトロドトキシン」であるが
その河豚の種類、部位によって毒の強さが違う

カワハギの仲間でもあるので
肝は美味しいはずだが
猛毒を持つ
猛毒を持ってはいるが、きっと美味しいはず

若い頃、危険な恋を体験するため
危険が及ぶにもかかわらず、ムチャをしたこともあったが

危険な食べ物(きっと美味いだろうということが条件)にも魅かれた
摂取しなければ大丈夫という、浅はかな考えで
天然のトラ河豚の肝臓を焼いて喰った

前屈みになり、下を向いて肝のソテーを口に入れた
もちろん、すぐ吐き出せるように...
にしても、微量は摂取しているはず
微量でも致死量になる毒であるから
いま思うと...

そして、肝は美味かったのである
ここにその美味さを書き記すのはやめよう
あまりにも危険な行為ではあるからにして

一つ言えることは
ふぐ毒・テトロドトキシンは、口に入れてもピリピリ痺れたりはしない


神経毒というものの、死に至る過程は凄まじいという
手足の痺れが
身体全体になり、失明
呼吸困難で窒息死である

フグの取り扱いは各都道府県で異なっていて
免許制度の無い所が多い
保健所が管理するのだが
宮城県の場合、講習を2回受講しただけで
実技講習も無い
こんなことでは、いけないと思うのだが
何十年経っても一向に改善はないのである

フグを扱う飲食店の少なさから
フグ中毒も比例して出ないのだろうが
転ばぬ先の杖は必須である

フグの講習会に参加する料理人は
フグの免許や調理許可書を欲しいだけで受講してはいけないのではないだろうか?

大切なのは理解と技術である...と おもうのだが...