アナゴの天婦羅
以前勤めていた店には、2tクラスの水槽があった
様々な魚が 喰われるために泳いでいたが
ツリスルモノとしては
ただ眺めて、タモですくって料理するだけにはとどまる筈もない
餌をやり、生態観察し
釣鈎を落とすのだ
活き餌を喰ったことのない 養殖真鯛(タイ) は餌の目の前で躊躇し
餌の沢蟹にクチビルを挟まれ、パニックを起こし
獰猛な天然鱧(ハモ)は、何も知らない養殖鰺(アジ)を追い込み
真っ二つに噛み切る
アナゴは というと
運良くそこまでたどり落ちた餌の匂いに寄り
一度真上を通り過ぎてから
バックして喰らい付く
こんな生態を観察しながら
板前釣り師は出来上がっていったのである
釣りというのは
直接目で捉えるサイトフイッシングがエキサイトするが
水中を想像しながらのイメージネーションフィッシングも昂る
暗く深い、肉眼では捉えられない水中をイメージするに
ボクの中には水槽があらわれてくる
と、同時に
親方の『こりゃ!あそんでねぇで、仕事しろ!』と
どやしながら振り下ろす杓子もよみがえるのだが...