かつら剥き


和食の職人にとって欠かせない技術はいくつもあるが、
初めて薄刃庖丁を持った時からこの試練が始まる。

新米(正しくは【新前】新しい前掛けを支給されて修行が始まるから)
の頃何度も指を切り身体に覚えこませていった
私の場合左親指の先を何度削いだ事か…
同じ箇所を削ぐためそこだけもりあがってしまっている。

刺身のつまに使うのが多いが、繊維と同方向に切る場合と、逆のきり方がある
前者はタワーの様に、後者はふっくらと丸める盛り付けだ。
ケンとも言い、縦ケン・横ケンと呼ぶ。

初めの頃はツマにならず、味噌汁の具 にしかならなかった。
昨今、ツマ切り器 なるものを使う職人もいるが、
いくら文明の利器が発達しても、この違いは一目瞭然だし、食感もまるっきり違う。
研ぎ澄まされた庖丁で滑らせながら、細胞を潰さぬ様切ったものと
押し潰す様な切り方では、張り・艶・切り口が全て違う。
ましてや薄さ・細さは比べ物にならない。
あまり薄すぎてもヘタルのが早くてダメなのだが…