新年 ある日の料理献立




椀物 海老糝薯(しんじょう)

先ずは、温まってもらう
しかし、温まるだけではいかぬ
吸い物は 店の顔 であるからにして...

粗目に擂った海老に山の芋を加える
糝薯椀は椀種からも出汁が出るが
やはりきっちり出汁をとらねばならない

今回は、焼干しアイナメと鰹出汁を合せる
七草粥で、かなり美味しい出汁とわかったので、多用しようと思っている

椀種が魚介系の場合は良く合いそうだ


この出汁には、柚子等の柑橘系の果実皮の香りは合わぬと思い

芹を吸い口に持ってきた
椀種としてではなく、香りの吸い口として

それに、十人前の椀量に生姜の搾り汁を三滴ほど
コレがちょっと芹の香りを邪魔してしまった
次回は、生姜の薄切りを一片、水に晒してから
サッとくぐすだけに留めよう


海老糝薯は
粘りの強い山の芋を半量使っているので
モチモチっとした食感と、芋の旨味が薯預(じょうよ)蒸しのように出ている
加えて、粗く擂り潰した海老の旨味
粉類や卵白等のつなぎは入れずに
雑味のない味に仕上げる


シンプルな料理

言葉のニュアンスは大いに違うが
手間暇がかかっても
ボクの云うところのシンプルさは 単純 ではなく

食した時の感覚で、雑味が無いもの

を目指している


しかしだ...
震わす程の料理は
いつになったら作れるのだろう

料理とは あまりにも難しい

しかも、繁忙時にはなかなか作れぬ
いつの日か
この矛盾を取り除ける店を作ってみたいものだ...