鱈キクの茶碗蒸し



茶碗蒸し
とは、誰が考え出したのだろう...

その、滑らかさと、口どけの良さ
鰹出汁が引き立つ味
具との調和...
日本料理が誇る蒸し物であると思う

しかし、どこにでも出てくる
ありきたりな料理でもある



鱈キクの食感は
火を通すと、僅かに変化してくる
火を通す加減でも、味と食感に変化が出てくる

茶碗蒸しは、「す」(気泡)が はいらぬ様
表面をかためる為の 一瞬の強火以外は
弱い蒸気でゆっくりと蒸すので
具となっているキクは、濃厚さを引き締めてゆく
銀あんには、ほとんど生に近いキク。
口どけの良さと、アノ味わいが
餡によってコーティングされ、ほんのり温められている

茶碗蒸しの具はシンプルで
森林鶏の腿と三ツ葉、菜の花。



むかし、
よく親父に連れられて行った料理屋で
幼いボクが好んで食べたのは
茶碗蒸しと、揚げ出し豆腐に
子持ち昆布だった

この3品があれば、親父が酒を飲み終わるまで
カウンター席に座り、足をブラブラさせながら
おとなしくしていたのである。

何より興味深々だったのは
板前さんの料理を作りだす不思議さと
庖丁の滑るような動きだったので
只々 見入って時を過ごしていた

親父は息子と一緒に酒を酌み交わすのを
この頃から随分と心待ちにしていたのだろう...