鯨の畝須
ミンク鯨の畝須(うねす)である
下あごから腹部にかけて、縦すじがある部位
これに火を通して食すのだが
火の通し方は人によって様々で
茹でるにも、沸騰させると肉質が硬くなってしまうので
酒や酢を加え、沸騰を抑えて茹でたりもする
自然坊では蒸す。
おからを厚く纏わせ、極弱火でじっくり火を通す
これほどの大きさとなると約1.5時間
そして、薄切りにするのだが
この薄さ加減で
食感も味も変わってくると云っても過言ではない
元々しっかりした身質なので
極薄切りにする
厚いと噛み切れなくなる
適度な時間を口の中で楽しませ
喉を通っていかなければならない
とても美味しい食材であるから
とても旨い酒が必要となってくる
昔は安価な肴だった...
親父は毎日の様に
二級酒をコップに注ぎ
目の前の鯨ベーコンをアテにし、
ボクを、組んだ胡坐の中に納めて呑んでいた
ボクの離乳食は
塩竃市場産、鮪の骨はたけ と、
女川産、鯨ベーコンであったのだ
親父はボクにこんなものを食べさせ
酒呑みに仕立て上げたかったに違いない
残念ながら酒呑みにはならなかったが
酒好きにはなった。
今夜はこれを仏壇に供えようか...