桶屋の末裔
北海道から、かつての釣りの弟子が来た。
もう10年以上の付き合いだ。
彼が仙台に赴任して、店の常連となり、一緒に渓流釣りに行くまで、そうたいした時間は掛からなかった。
渓流釣りを今までいろんな人に釣りを教え、一緒に楽しんできたが、
彼は言う所の 一番弟子 となろうか。
私がある日突然、餌釣りからルアーに転向したものだから
彼は彼なりに私に不満があったようだが
その訳は、私の発言による定義が、逆転したからであった。
その違いは...
渓魚は本物の餌で釣らねばならん
偽物で釣っても、釣られた魚は本望ではないだろうから
から
学習能力が高い渓魚に興味を持たせ
引っ張り出して、追わせて、渓流の自然ではではあり得ない物体を喰わせる
のが、楽しくなった。
餌釣り師であった時は盛期の2−3時間でかなりの数を釣ることができるまでなって、店で売っていた。
が、しかし 大物を釣っても、たくさん良型を釣っても
トキメキがなくなってしまった。
釣り自体はそれなりに楽しいのだが、トキメキやキラメキを失くしてしまった。
半職漁師と成り果てた身からは錆だけが浮いてでた。
失ったものを取り返す方法は、何の前例も無く
一から出直す必要があった。
思い切って餌関係の釣道具を処分し、
高校の時、家出したあの時の、もう戻らぬ気持ちでルアーに転向した。
ルアーというエリアの仲間達は快く迎え入れてくれ
夢中になりかけた時にはもう取り戻していた。
ああ、仲間とは…
今やかつて弟子といっていた連中も 弟子 という言葉は要らず 仲間 となった。
今回、北海道から来た仲間は
桶屋 岩溯 と名乗っている
私が彼の釣号を考えたのだが、気に入ってくれているようだ。
桶屋は彼のミドルネームで、先々代の家業。
がんそ は、デカイ身体で岩だらけの源流を溯り、釣りをする姿から。
他に 我岩 というのもいる。
我岩 ががん は、彼が魚釣りの話をする時、
そーなんですよ、こー流したら ガガーン ときましてね…
と、常に ガガーン を連発するから。
マコトニもって、楽しい仲間である。
桶屋は今回、岩魚の40cmをあげた。
私のはまったルアー釣りはどんなんか?
試しにやってみたところ、たぶん彼もはまるだろう。