渓流の魅力考

幼い頃から、釣りキチの親父に連れられ
毎週 二日、海釣りに出掛けていた

土曜日、半どんで仕事を終えた親父が
倉庫の中から釣り道具を準備するに 見繕っている

幼いボクは、週に二度の釣りにワクワク感を覚えつつ
親父の手伝いをし、カンテラや、釣り道具
お袋の握った バカでかいおにぎりを布製のリュックに詰め込んでいた
そんな週末の
毎週お決まりの週末の、楽しみだった

砂浜で投げ釣りをし
日が沈むとカンテラを出し、青白い灯をともし
硫黄臭い中、飽きもせずただただ、釣りをしていた
夜が更けると、一旦家に戻り
翌朝また釣りに行く...


それはボクが社会人になるまで
ソレは当たり前の日常の様に続いたが
板前修業 という、過酷な仕事に就いた時から
週二度から、年に数度となる
親父は不服そうな顔は一度もしなかったが
釣りに行く回数もそこからめっきり減っていったように覚えている


ボクが店を開きはじめて間もない頃
京都から単身赴任のおっさんがいた
彼は物静かで、飄々として、アグレッシブな人だった

親方、海もヱヱけど、渓流も楽しいで...
一緒に行かんか?

オープンしてから店は一段落ついた時期であったので
ちょうど今の時期であったろうか
二人で渓流に出掛けた
彼は、ホンの一触りだけ釣りの仕方をボクに教え
他は山遊び に重きを措いて教えてくれた

焚き火の仕方の色々
喰えるモノと、喰えないモノ 美味いモノ
木の切り方、活かし方
渓魚の扱いと尊び
山ノ神に気に入られる方法
一服の仕方

ボクは彼から多くを学び、感じ取って
渓流にはまり込んでいった
もっと早く会いたかった...

ボクは彼を何時しか
師匠
と呼び、一緒に過ごす時間をとても楽しむようになったのである


渓流釣りの魅力にずっぽりハマったボクは
色々な人を引き込み
一緒に楽しむ事となる
もっと早くに知っていれば...
とは思うが
出会った時が最良の時であったに違いない


今日も友人を引き込む
いったい何人目なのか、もう忘れてしまった

二口渓谷はまだ雪代がちょっと残って
水温は上がってきているように感じたが
渓魚達の活性は 思ったほどあがっていないようである

彼にルアー釣りを軽く教えただけで
後は自由に釣ってもらった
前日、一式揃えるに、釣り具屋を回り
口で伝えられることはほとんど話した
あとは彼のスタイルを 彼が見つけ、決めてゆくのである

ボクは3チェイス 2バイト で、チコイやまめを2尾釣った

彼はイワナとヤマメを1尾づつ



この笑顔を見れてよかった
ま、
釣りする前から笑顔だったのだが
宝石を手にした時の笑顔はまた格別である

彼が帰った後、
奥さんにメールをする

最初に謝っておきます
ゴメンな...旦那を渓流にハメちゃって

彼女とは古い付き合いなので
きっと許してもらえるだろう
と思っているのだが
それはダンナのハマリ具合で決定するだろう