『山修行』 其の壱
毎年、盆に行われる「山修行」の計画を練っているのだ
うむ〜、我々も年をくった。
今回のキャンプは、ちょっと楽なところに設営してもイイんぢゃないかね?
いやいや、そのムサイ 白髪交じりの髭に似合わぬ事を云うな!
今回も荒修行に決まっているぢゃろ!
しかしだな、快適な空間を作るにはそれなりの用具が必要ぢゃで
そうそ 荷物を運ぶにも、ネコグルマ押してヒィコラゆーのもしんどいしな...
た、たわけ!
そ、そんなことで一端の山岳渓流釣り師と云えるか!
んだんだ、今年もつらいつらい荒修行ぢゃ。
ネコグルマ持って行って、山岳渓流ってのもおかしいんぢゃねーかい?
我々の目指すところの、山岳渓流キャンプは
快適
こそ主たる目的ではないか!
いーの、いーの。ことしもこれでいこー!
そんなこんなで、まとまったよーなまとまらないよーな
おっさん達の青春キャンプこと、山修行の幕は開けた
秋田のとある、山奥に
それはそれは 綺麗な水を湛えた入山困難な渓流がある
ま、困難とゆーほどではないけれども、
ま、困難といえば困難である。
快適とは程遠い、断食・禁酒の苦行
それが真の修行である。
切り立った崖伝いに、切り出した山道を辿ってゆくと
本流に注ぎ込む沢がある
その横に、
ガムテープで修理と補強を施された 20年選手のテントと
やたらに重い メッシュのタープを張る
快適を求めた、木製の肘掛け付き折りたたみ椅子を...
これまた重いが、どうしても譲れないと持参する
これで修行堂はできた
只今から始まる過酷な試練を乗り越え、いっときの休憩をとる場所である
荷を解いた連中は、早速第一の修行
沢登り
を始める
手には、渓流魚の居合抜きに使う棒を携え
アブの猛攻に打ち勝つ気力を養い
己の体力の限界を知る為、ひたすら遡る
辿道を進み行くと、朽ちた橋が行く手を遮るが
今まで、かなりの修行を積み重ねてきた我々には
「このはしわたるべからず」の、一休和尚の様に
堂々と、恐れずに ど真ん中を闊歩する
渓流に棲むイワナやヤマメは、他の河川と比べ
非常に俊敏であった
断食を兼ねる修行なので、喰うわけではない
対するだけである
なめらをヘズリ、高巻きをし
容赦無く襲いかかる大量のアブに負けず
蝉が鳴くのを止めぬ、夏の陽射しの中
大量の汗を流しつつ、ボクらは...
修行堂に戻ると、間髪をいれずに
冷水での 水垢離(みずごり) が始まる
コレも過酷な修行である
水中の石上に座禅を組み、大滝から殴るように流れ落ちる冷水に打たれるのだ
コレは『うひょー』とか『きもちいぃ〜』などと言っているわけではなく
あくまでも厳しい修行に耐えている顔なのである
この二人は遅れて参加したが
あまりのキツさに、半日も持たず
闇夜に紛れて脱走したのである...
それほどの冷たさをこの水風呂
あ、イヤ、水垢離はマァ、ナニなのである
ズブロッカなど冷やして、ライムを絞れば
きっとウマいに違いない