『山修行』 其の弐


実を云うと
断食・禁酒などはウソである
運び込んだ荷物で、かなりの重量を占めているのは
喰い物と酒類であった。
修行などと云うモノには、あまりにもかけ離れていて
渓流釣り好きの おっさんの本能が赴くまま

あ〜、でかくて綺麗な イワナやヤマメを釣りたい
あ〜、好きなだけ 好きな酒を飲みたい
あ〜、美味いモンを たらふく喰いたい
あ〜、存分に寝て、その上 二度寝したい
あ〜、いちんち中 笑って過ごしたい

なんてことを実践するだけである。


こんな ぐーたらな輩だが
行動を共にする「仲間」は限られてくるらしい
誰もがこのような欲望を持っているのだが
それでも一緒に数日間を過ごすには「同じ匂い」を持っていなければいけないようだ

強いて挙げれば
ぐうたらの中にも率先
これが必要不可欠の条件ではあるまいか...



さて、一日目は
散々水浴びを楽しみ
酒を飲んでは、暑いといってまた水浴び
ときたま発作の様に釣りをしては アブの猛攻に遭い
大汗をかいて また水浴び
昼飯の釜上げうどんを喰っては、汗をかいたと云って 水浴び
こんだ、冷やしうどんに 大根おろしをぶっ掛け、辛いと云って 水浴び

なにがそんなに気持ち良いのかというと
サウナの合い間の水風呂と一緒であるからであろう



冷たい沢水も数秒で身体に慣れ、長く入っていられる

数分経つと、ラードが固まってきて関節がいう事を利かなくなってくるが
水から出ると、木漏れ日の中でラードが溶け出す
これを繰り返すことによって、身体の中に上質のラードが出来上がってくる訳である

上質のラード(ラードラードって、豚ぢゃないんだけどね、ま、そんなもんです)
は、つい最近 学会で発表されたところによると
飲まず食わずで生きながらえる際、通常のラードよりか燃焼が良く
且つ、燃費が良いという矛盾的な結果が報告されたとあった。(uso)
つまりは、タフ になれると云う事だ?


夜になると酒量が増し、ツマミもアレヤコレヤ登場する
いくら喰っても太らないとされる
「ラムの炭火焼ステーキ、塩味に香草とバルサミコの風味を添えて...」や
「気仙沼ホルモンのニンニクと味噌の味わい、スタミナつけろや!」を喰らい
箸休めに
「ホヤのマリネ、夜を保つで、保夜…うへへ」と、豪華な宴は進み
「元気一杯の俊敏イワナを 焚火でじっくり炙りました」をたいらげ
「残しておいた 気仙沼ホルモンと白米の出合い、おかわりくださいっ!」で〆る

ビール、ウヰスキー、ズブロッカ、ジン...
焚火を囲み、どんどん減ってゆく
一杯のシュラカップを煽り切る度
山々、木々に囲まれた「狭い夜空」に
満天の星空を仰ぐ
天の川が懸かってる端に流れ星が煌く

男達は首を痛め
んぢゃ寝る
と、テントに潜り込んで逝った