合わせる 其の壱




焼酎 左から、芋・麦・米



純米酒



次に繰り出す新コース企画の為、試飲をした

コンセプトは

<酒と料理の相性>



以前、じねんぼうにて
純米酒の勉強会が開かれた

同じ蔵、6種類の純米が用意され
それに合わせた料理を用意するのが仕事だった

最後に蔵元から
スピーチを頼む
と、云われ
ボクは『酒と料理を合わせるなんてナンセンスだ』
と、口を切ったのだが
それは個々、其々に趣向というものがあって
合う合わないを誰かが押しつけるものではない
と、思っていたからである...

提案によって影響される事はとても良いコト
それは受ける側の感性が生かされるからでもある

銘に押されたり、頼ったりでは自分の感性が半減してしまうやもしれぬ

料理とて同じ...
誰もが手放しで美味しいと感銘する料理など無いのだから。


しかしながら、
相性が悪いという感覚は、相性が良し という感覚よりもハッキリしている

ボクの仕事の一つは、
数多い お品書きの中、それを最大限に省き
相性の良い酒と料理の提案をすること。

簡単そうだけれども
ボクにとっては、とても難しい仕事であるのだ


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冷で、ぬる燗で、熱燗で...
全て試してみる

その後、料理を考え、作って合わせてみる

試飲会にしては時間が掛り過ぎるが
ココが大切である




扶桑鶴は、7号酵母と云う
しっかりした日本酒の味を作り出す酵母を用いていて味わいも深い、
なのに、どこかあっさりした飲み口もある。

この酒には、同じ感覚の料理を被せてみる

冷蔵庫の中を物色しつつ組み立て始める

純日本的なクリーミーさが口の中で広がり
それでいて、くどくなく消えてゆく料理...
<温豆腐、鮑の肝ソース掛け>をつくり、合わせる

アタマの中
少ない脳みそと引き出しを
軽く引っ掻き回すと、いくつかの候補の中
こんなんのが出てくる。

鰹と昆布の出汁で、じわりと温めた
崩れやすい木綿に、淡い味を染み込ませ
ひと欠片口元へ持ってきた香りは、やはり日本酒と良く合う

鮑肝の濃厚な磯の香りは、神亀の酒粕と混ざり合い
より豊潤な香りと
それに見合う濃厚でいてサラリとした深みを持ちつつ
豆腐と共に溶けてゆく

冷か、燗かは
もう
好みだけである

まだまだ活かせる料理があるはずだが...