カナシミノ...

叔母が4人いた家でガキの頃すごした

平屋の寮を改築した古い家。

実際に叔母は6人だが、二人嫁ぎ
その家には女4人で住んでいた
両親は共稼ぎだったので、日中 預けられていたのである
お袋が5人もいるような感覚か...

4人の叔母は、昔人であり
何をするにも口喧しく、厳しい躾をさせられたのだが
云う事を聞くガキではなかったので
しょっちゅう逃げ回っては、暗くなるまで遊び
帰ると、役所の仕事を終えた両親にこっぴどく叱られる

さんざん口喧しかった叔母達は
悪ガキが叱られるのを一生懸命かばってくれる
優しい叔母達でもある

4人の中で一番上の叔母は、着物を作るのが仕事で
番板という長い木の机で縫い物をし
脇には大きな火鉢が置かれ
そこでよく、餅を焼いたりしてくれた
彼女はもう随分前に亡くなってしまった

二番目の叔母は、保険会社に勤めるキャリアウーマン

四番目の叔母は、活け花とお茶、三味線の師範である

三番目の叔母は16年も前に、くも膜下出血で倒れ
そのまま寝たきりで
昨夜、危篤と連絡が入った

今朝早く、病院に駆けつけたが、息をしているのがやっと

一番目の叔母を看取った時
涙が溢れてどうしようもなかった
今日もそうだった。



叔母達にはそれぞれ愛称があり
上から順に
おっきばっぱ
ちーばっぱ
じょんばっぱ
きっちゃん
見舞った叔母は じょんばっぱ


悪ガキの最初の子分は
ジョン
という名の シェパード犬で
その ジョンの飼い主が三番目の叔母であった

じょんばっぱ と きっちゃん は、お袋と良く似ている
3人揃って歩いている後姿は
息子でさえ見分けがつかない

彼女等には子供がいなかったので
悪ガキは、悪ガキのくせに 大変可愛がられた
ゆえに、悪ガキは大人になっても
ばっぱ、ばっぱ
と、何かに付け 顔を出した
悪ガキは料理人になると
ばっぱ達に料理を作って持ってゆく
中でも、大晦日に持ってゆく
おせちの重箱
は、叔母達の喜ぶ顔を目に浮かべながら、丹精込めて作った

大店の割烹屋で働いていた頃
おせち作りは5日間徹夜でやらされた
参の重までで70品を越える料理を200近く
しかも、何から何まで手作りだったから
5日間の徹夜は当たり前といえば当たり前であるけど
かなりの重労働で、

自分で店を出したら
おせちはやらない
と固く誓ったほどであった

しかし、叔母達の
美味しい 美味しい
と、よろこんで食べる姿を見ると
年末に仕込みをしてしまう
もちろん家庭用なので、品数は少なくし
厳選したのを作る

悪ガキの成長したのは、叔母達だけの為に
おせちを作る。といっても過言ではない。


もっともっと 食べてもらいたかったな...