焚火宴会人がゆく 桃源郷編 Ⅷ

テントの前の焚火
焚火の飴色のでかいイワナは、私達の歯形を付け
次第に骨だけになってゆく
最初にかぶりつくのは、頭を下にし、焼かれていたことで
魚体全体から滲み出てきた脂を蓄え、飴色に磨きのかかった首っ玉だ
コレを数匹繰り返し
山菜のほろ苦い炒め物と
根曲がり筍の味噌汁を・・・
最期は、骨まで柔らかくなった 岩魚飯 で〆る

岩魚飯は炊き込みご飯だ
研いだ米に、塩・コショウ・醤油・ニンニク・バター を入れ
焼き上げた 飴色のイワナ を入れて火にかける
流木と針金で作った 三脚に、チェーンを吊るし Sカンを取り付け
飯盒を吊るす
こうすると 火加減がチェーンの長さを変える事によって調整できる
焚火の薪や熾きを、入れたり抜いたりしなくても良いのだ
始めチョロチョロ中パッパ 赤子泣いても蓋取るな・・・最期に藁を一焼べ ( くべ )

焚火での飯盒炊きは難しい
沸騰してきて、炊き上がりそうな頃合に
棒を蓋にあて、端を耳に当てる
そうすると、聞こえてくる米の踊る音
ブクブク、ボコボコ、ポフポフ・・・
静かになってきたら、飯盒を上にずらして火力を落とし
今度は匂いを嗅ぎ分ける
飯盒の蓋の隙間から噴出す 湯気の匂いに集中する
すると、ほんのりと香ばしい香りが・・・
オコゲ だ
すかさず焚火に近づけ
底一列の パリッとしたオコゲ を作り出す

さてさて、逆さにした飯盒に
おまじないの 【棒切れトントン】 を・・・
暫し蒸らして蓋を開けると
飴色イワナの周りに、飴色をわけてもらったニンニクがころころ
割った薪で作った宮島(しゃもじ)で岩魚飯を切る
骨は飯盒の圧力効果で柔らかく
コロのニンニクは溶ける寸前で形を成している
筆舌に表せはしない味なので、表現できない。

師は、この岩魚飯が骨酒の次に好物だ
最初から最後まで メインディッシュの宴は
こうして終わりを告げる
僅かに残った骨酒を 高らかに
満天の夜空に掲げ
山ノ神に感謝を・・・



さて、桃源郷の二日目は、流れに冷やしていたビールで幕を開けた

昨夜、歯も磨かずに眠りこけてしまったので
口の中がすごいことになっている
とりあえず、清い流れで顔を洗い
流れの中で冷やしていたビールを飲む
これがイイ。たまらなく美味い訳ではないが
歯磨きの後の、それでも残っている昨夜の余韻は
この清涼感で洗われる
ビールが清涼感とは、ちと おかしいが、とても清々しくはある

朝飯
灰アクの中で、細々とくすぶっている薪
寝る前にぶっといのを突っ込んでいた
ちょいと向きを変えて、空気の入り込む隙間を空けてやり
新しい薪をくべてやると
火はすぐ復活し、朝飯程度を作るには充分な火力になる

残りの岩魚飯。
これに渓の水を足して 雑炊 にする
昨夜の暴飲暴食で、多少疲れた胃袋に優しい
コーヒーを飲み終えたら
いよいよアタックだ
昨日 師の行った支流に二人で入る