おやっさんの薄刃
庖丁を研いで帰宅すると
梅雨がまだ明けぬ空に、
やっと今日から晴れます
そんな朝空に霧がかかっていた...
親方から受け継いだ庖丁の
その中から薄刃を取り出し
大根をかつらに剥く
その、七寸五分の
薄刃にしては重量感のある庖丁は
おやっさんの尺二の柳刃と同じく
手にしっくりと落ちつき、指に貼りつく
刃の喰い込む感覚と、滑り
庖丁の計算されつくした自重というのは使い手の
使い勝手をとても良くするものである
それがたとえ、磨り減り細くなってゆこうと変わらぬ...
ボクが自分で買った庖丁は、もうほとんど手元には無い
気概のある若衆達に渡したから...
今手元に残っている自前で買ったのは
鎌形の薄刃と鰻の割き庖丁、剥き庖丁だけだ
鎌形の薄刃...か...
一番使いやすい減り具合のトコで
かつら剥き専用に使ってたから
そこからあまり磨り減ってはいない
さて...