焚火宴会人がゆく・初恋編Ⅳ

カスタムナイフで魚を捌き、根曲がり竹で作った串を刺す。
落ちついた良い火の回りに立て掛ける
焼けるまで1.5時間かけるのだ。そうすると格別に旨くなる。

師と先ほど足元をすり抜けていった35cmオーバーのヤマメの美しさを語りながら宴が始まった。

焚火を利用し調理が始まる。
火の付け根に高さ15cm位の平らな石を2つ隙間を空けて並べ、五徳の代わりにし、
隙間に良く燃えている薪を詰める。
石は火を熾した時からくべられていたのでかなりの温度になっており、
いわば電磁コンロの様な役目もする。

前菜は先ほど採ったタラの芽を塩茹でし、マヨネーズと焼けた石で炙ったスルメを細く裂いたものと和える。
ビールは1人3本。内1本は翌朝の分にとっておく。
日が暮れ始め、焚火の赤が徐々に鮮明になってくる頃
火の中に太い山桜の枝を渡す。
二股の鉄串に長葱と和牛の霜降りハラミ(横隔膜)を交互に刺し、
程よく煙を出してきた山桜の木に先端を刺す。
早くもメインディッシュだ。
先端の方から焼け始め、桜で燻煙され、ナイフで削ぐと肉汁が滴り落ちる。
あくまでもワイルドにナイフで削ぎ、そのまま口に入れる。
口の周りの脂もそのままに日本酒が始まる。
数日前に孟宗竹を切り出しカッポ酒用徳利を作っておいた。
節を斜に切り落とし、半分残った節に穴を開け、下部は2本の足を残した。
酒を入れ、足を火の側に挿し込み竹ごと翳して熱燗にし、
そこにキープしていた小ぶりのイワナの素焼きを入れる。
岩魚の骨酒
師はキャンプに来てこれをヤラナイトシヌそうだ。
だから必ず小ぶりのイワナはキープする。

酒が燗されてくると、岩魚と竹からじわじわとエキスが染み出てくる。
これまた竹で作ったぐい呑みでヤルと格別だ。
これの肴は ヤマメの刺身
太っていると8寸位から筋肉の色がオレンジ色がかった淡い赤身になってきて
身質は柔らかいが、味は鮭鱒科独特の旨い脂が舌の上で溶け出してくる。
師はとても満足げに私にこう言った。
ほんまに旨いのおぅ。こおいうキャンプなら毎日でもいいのおぅ。も、帰らんとこか。


単身赴任3年目・出世欲ゼロ・離婚の危機・後10年で退職・趣味:酒、女、渓流釣り・仙人になれるのだろうか?