焚火宴会人がゆく・秋の読書編Ⅲ
日が傾き始め、ちょっと肌寒くなってきたからシュラフを引っ張り出す。
肩まですっぽり潜り込み、手だけを出して読んでいると
羽毛の特性のソレにより、体温でシュラフの中は眠りに就くのに程よく、
本当に程よく温まってくる。
音と風と光と温度が私の読書の邪魔をする。
が、大変気持ちの良い邪魔の仕方だ。
身も心も自然に委ねるのが、この休日の過ごし方なので
全て自然体で、なすがまま、時に流される。
眠りに入る瞬間を、意識して長く感じていようと、努力の様なものをしてはみたものの、
ウツロイは甚だ短いものである事に嬉しさも感じる。
鳥のさえずりで目が覚め文庫本を拾い上げて見てみると
ほんの数ページしか読み進んでいない。
ソレが妙におかしく、幸せに感じる。
この調子だと持ち込んだ3冊は、ただの使わない荷物になってしまうようだ。
日が暮れる前に食事の支度を始める。
煮込んであった豚バラ肉は、もうトロトロに柔らかくなっている。
半分を大きめにカットし、シチュウに。
残り半分は厚めのスライスにして焼肉のタレで葱と炒めながら絡める。
手抜きが原則だから、飯は炊かない。
食パン一斤。これで賄うことにした。
たいして動いてもいないので、2人とも腹はそれほど減ってはいないから、
ビールのアテにピスタチオを摘み、ワインに移る。
玉葱が溶けて形を成していないシチュウを啜り
煮豚の焼き豚を喰らい、ワイルドターキーがはじまる。
相方が天気を気にしはじめた。
雲行きはちょっとアヤシイかもしれないが、そんな事はどうでもいい
酒が弱い私はカッコだけつける。
シュラカップに入ったバーボンを文庫本の横に携え、
たまにチビッと啜りながら本を持ったまま眠ることで
このキャンプは完結するのだ。
ブースカはどうしても天気が気にかかるらしい。
すっかり暗くなり、稜線の黒がさらに濃くなってきた頃
ちょっと、ちょっと...西の空がなんか光ったよ
と、いう。
無視して本から目を逸らさずにいると、また同じ事を言う。
ねえ、今、西の方でなんかピカッと...
ライトだよ、ライト。車のヘッドライト!
ブースカは怪訝そうに言う
確か、あっちの方角には道路なんてないはずでしょう?
・・・。
私は完璧に無視することにした。
前回、台風直撃の為、夜中に撤収したキャンプを思い出したくないからだ。
この男は自称ハレオトコ。
私も自称ハレオトコ。
何故か2人のハレオトコが集まると...