焚火宴会人がゆく・秋の読書編Ⅳ
算数でも確かこんな計算がある。
足し算ではなく、掛け算だが...
前回のキャンプはまさに台風直撃。
テン場は0時を回ったところで水浸しになった。
ゴアのシュラフカバーを持っていないブースカは
ケツが濡れて冷てえとぬかし、帰ろう、帰ろうとせがんだ。
寝返りを打つとテントの下地が、ポヨォンとウオーターベッド状態になっていた。
仕方なく夜間の撤収をするが、かなり増水した川は危険だ。
しかし、この渓流は庭のようなもんで、底石の一つまで熟知している。
過信はしていないが、もっと増水してもいける自信はある。
ヒーヒー言ってるブースカを連れて帰る。
この時から彼の釣号は やかん鉄舟 と付けられた。
今回もか...と思いはしたものの、私の身体はそろそろ限界が近づいている。
私のシュラカップには二頭身のウルトラマンの絵がプリントしてある。
娘が買ってくれたものだ。
胸のカラータイマーはバーボンを飲りはじめた時から
赤の点滅をしはじめたのをブースカは知る由もなかった。
西の空の時々光るものは、ブースカが恐れている現象の象徴だった。
それでも私は彼に
ヘッドライトだ。ヘッドライト!車のな!
と、彼の疑問をはねつけていた。
シュラカップのウルトラマンのカラータイマーは
もはや赤の点灯になっていた。
限界点超過である。
ゲームオーバーである。
ジ・エンドである。
もう、これから先は
テントが流されるか、ブッ飛ばされるか
夜中にモヨオス以外、心地良い朝の目覚めまで
何があろうとも起きないのだ。
ブースカがごちる
寒い とか、冷たい とか、帰りたい などという言葉はみな却下である。