焚火宴会人がゆく 桃源郷編 Ⅳ
ここぞ というポイントからはもちろん
小さなポイントからも立派なイワナが飛びついてくる
スレてはいない
そういった安心感から
おおよそ25cm以下はリリースして釣り溯る
師 仙庵の魚籠は丸く大きなブリキ製で、網が付いている
口に15cmの輪があり、それを回しカギで止める
5尾限定の活かし魚籠である
魚を傷めない様にと
一番大きいサイズを購入したらしく
持ち運びはかなり重たいおもいをしなければならない
源流アタックには不必要だと思うのだが
これも 筋金入りの山男、源流釣り師のありかたなのだろう
魚籠はすぐに5尾を蓄えた
次からはサイズアップする度に
入れ替え である
次候補のテン場が近づいてきた時には
二人とも沢山の岩魚を釣っていた
仙庵魚籠を覗いて見ると
大きな魚籠の中で
黒に白や朱の斑点が並んで鰭を僅かに煽っている
時々反転の動作で、居付きイワナのシンボル 黄腹 が鮮やかに咲く
鰭の縁取りが白い。大型の特徴だ
全て尺上だろう…
いや、1尾だけ小さいのがいる18cmくらいだろうか
大きいののあいだをすり抜けて泳ぎ
遊んでいるようにも見える
しばらく魚籠の中のイワナに見入っていると
横で尺足らずのを師は釣り上げ、放している
師匠、入れ替えしないの?
と、問うと
エエんや…
そのちこいのは 骨酒 用や
骨酒はそんくらいのが一番うまいよってなぁ
師 仙庵はキャンプに来た時
【イワナの骨酒】を飲らないと シヌ そうだ
それほど骨酒を愛している
私の鮎用の浮き舟は携帯用である
受け口だけプラスチックで
その下はメッシュとビニール製でできている
しかし、そのビニール部分が短いので取り外し
使い古したウェィダーを再利用し取り付け
20尾は入る袋にした
だが今日は、師に倣い、5尾のみのキープ
尺上は3本
車止めから歩き始めて8時間経っただろうか
テン場に最高と思われる場所に辿り付いた
小さな枝沢が流れ込む合流地点
ちょっとした丘のように盛り上がったところにテントを張る
かなり使い込んだ年代物のテントなので
雨漏り防止にツェルトも張る
先ずは焚き木集め
そこらじゅうにイイ焚き木がゴロゴロしている
乾燥している為、火付けも苦労しないであろう
テントにザックを置き
一服する
例の湿気てるが美味いコーヒーを楽しみ
ちょっと遅い昼飯をつかう
昼飯はいつでも補給できるようにと、行動食のおにぎり
仙庵魚籠のイワナと
圧倒的な存在感を受ける山並みを交互に見
目的地に近づいている喜びと
これから先の緊張感に満ちてきている感動を顔に出す
2杯目のコーヒーを啜りつつ、地図を見直すと
やはり3kmで合流地点だ
アタックは明日の予定だったが
体力も気力も充実している
今 が攻め時と結論を出す
この時、若かった私は体力、持久力に多少の自信があったのだが
年齢がひと回り上の仙庵は、私より上回る体力を持っている
急登でも息が乱れない
恐るべき中年である
テン場からも相変わらずイワナは釣れた
大きく深い 長トロ淵 の先に出合いはあった
長トロ淵は両側が切り立っている10mほどの岩壁の 廊下帯 だったが
高巻きせずに へつる (壁際の岩の切れ目をホールドし横這いで渡ること)
落下しても良いように水際にホールドを求める
水深は5mくらいか?
あまりにも透明度が高すぎて、水深を目測できない
浅い、と思って入ってみると倍位の水深だったりする
慎重に水中のホールドを探り渡りきった
このような難所では
【三点支立】しなければならない
手足の4点のうち
1点を動かす
という意味だ
それと、垂直に身体を立てることも重要だ
急勾配の壁を横這いすると、滑りやすいので
おもわず身体を壁に付けてしまうが
それではかえって滑りやすくなってしまう
摩擦面が多い方が滑り難いと思うだろうが、そうではない
予想通り流れは二分している水量だ
ちょいと危険だが、二手に分かれてみる
1時間後に待ち合わせを約束し、アタックする