焚火宴会人がゆく・シーカヤック編Ⅲ
箱メガネでキャッキャ言いながらエライ寄り道し
やっと、3人の言う所のプライベートビーチに到着する。
早速、夏のビーチを快適に楽しむグッズが狭いビーチに機能性重視の配列を見せる。
このビーチはもちろんプライベートビーチなんかではない。
所有地でもないし、大潮の満潮時には消えてしまう
言わば腹が減ると『ホラ、飯喰いに来てやったぞ!喰ったらすぐ三軒隣の斜向かいのアメリカ雌猫とホレ、ナニしねばならんから、はよ出せ!』
…と飯を喰いに来る、たまに幻になる猫のヒタイ的なビーチなのである。
確かに暗礁が多く、漁船は接岸できないし、丘からも断崖絶壁でザイル無しでは来れないだろう。
そしてとても静かだ。
波の音とウミネコのニャーニャーと風の音しか聞こえない。
着いた早々、謎のベトナム人とイギリスのぼんくらボンボンに
『さ、さぁ、早く早く』とケツを叩かれ
サモア漁師風はタイツ姿で暗礁の間にへと消えてゆく。
彼の特技といえるかどうかはわからないが、彼のこの場での仕事は
【食料素材調達係】と【まかない夫】である。
彼は20分で【食料素材調達係】の仕事をやり終える事に美学さえ感じていた。
仕事をきっちり20分で終え、ビーチのチェアーに腰掛けると
待ってましたとキンキンに冷えた【ジーネン・ヴォーノ】と名付けた酒が目の前に差し出される。
この酒はジントニックで、それにスダチの果汁を加え、スライスをグラニュー糖でサッと煮たジャムを浮かせた
それはそれは、夏のビーチに良く合う飲み物だった。
3人で今日のこの日と、海の恵みと、艇とに乾杯し、あくまでも上品にゲラゲラ笑う。