焚火宴会人がゆく・誕生編
そこは叔母達4人姉妹の家で、夕方までそこにいた。
遊び盛りの小学生が家にじっとしている訳はない
学校から帰るとランドセルを投げ出し、近所の悪ガキ共と日が暮れるまで遊ぶ
近くに宮城球場があり、試合日になると放課後飛んでゆき
裏門の鉄格子の間をくぐり抜け、外野席とグランドの境の低い塀に隠れながらボールをガメて銭湯の横の空き地に持っていった。
空き地には土管がT字に放置してあり、それが秘密基地になっていた。
土管の中の煉瓦と粘土でできた 宝物箱 には様々なガラクタ達がひしめきあっていた。
その中に硬球がまた追加された
全部で20個ほどあっただろうか
早速キャッチボールがはじまる
各自専用のグローブを持ち出すが、どれも新聞紙で出来ている。
貧乏な家のガキ共は野球の皮製グローブなぞ持ってはいないので、古新聞で作る。
折り紙の兜の要領でぶ厚く作り、キャッチャーミット・ファーストミットまである。
子供が考えたものと思えないほど使い勝手は良い。
普通だったら小学生はゴムまりで遊ぶものだが、彼らにとって金のかからない硬球がメジャーだった。
硬球だから受けても痛くないグローブが要る
大人になってから記憶を辿って新聞紙で再現してみたが、ちょうど子供用の大きさで、しかも普通にキャッチボールができる性能と耐久性が兼ね揃えてあった。
貧乏人はある意味職人肌天才の集まりなのかもしれない
金持ちのボンボンが持っている青いグローブは憧れだったけれども、新聞紙のグローブは常に新品があるし、10〜20投もするとすぐに手に馴染んだ。
悪ガキ3人組みはキャッチボールに飽きると、おやつの時間だが、これも現地調達で
路地3本むこうに立派な実を付ける甘柿がある家があり、そこの柿を頂に行く。
その家の主は絵に描いた様な頑固ジジイだった。子供達からは ガン平ジジイと呼ばれていた。
目眩縞の着流しで縁側に座り、日がな一日独りで碁を打っている。
家の周りには高い塀で囲まれ、角に柿の木がある。
塀を乗り越える為に2本の棒を三角に立て掛け、1人が棒を抑え、もう1人が塀にしがみつき、そのケツをもう1人が支える。
塀から顔を出し中の様子を窺うと、ガン平ジジイは縁側に座ったままで碁盤を睨んでいるのか、居眠りしているのか、子供の目には判断がつかなかったが、恐れを知らない悪ガキ3人組は行動に移った。
美味そうに実った柿をシャツの中に突っ込み、1個を咥えたところで
物凄い怒鳴り声が響きわたった。