焚火宴会人がゆく・誕生編Ⅲ
焚き付けを自分でするためにだ。
叔母の家の風呂は五右衛門風呂で、木枠なのだが底は鉄板だった。
スノコに乗って沈め湯に浸かるのだが、一度失敗してケツを火傷した。
それからは専用に下駄を用意してもらい、湯船に浸かる。
水汲みが終わり、いよいよ火をつける。
薪の下に入れてある 風船状にした新聞紙にマッチで火をつける。
乾燥した薪は、うまく新聞紙の炎を移し、バチパチと燃えた。
その後、何度か失敗したが、火種から薪に移す時、小割にした薪をつなぎに使うとより燃えやすい事を学習した。
次のターゲットは一番上の叔母の火鉢だ。
その叔母の仕事は着物の仕立てで、いつも優しくしてくれた。
私は彼女を【おっきばっぱ】と呼んでいた。
仕事部屋には六尺の長い ばん板 があり
横に大きい火鉢が据えてある。
火鉢にはゴトクが立ててあり、火箸・灰かき・火ごてがある。
冬には火鉢のゴトクの上に網を置き、餅を焼いてくれた。
良い焦げ目がつき、プーッと膨らんだのに削りたての鰹節と醤油をかけ、
お湯を注いだ【湯餅】が大好物だった。
火鉢の中心には消えることのない炭がいけてあり、使わぬ時はギザギザのついた灰かきで炭を埋める。
それはまるで日本庭園の様に整然と綺麗で無駄が何一つない空間だった。
その庭園を火箸でいじくり回していると
あんまりチョスとネションベンすっと!
と叱られる。
私は子供が火を使うといけませんという戒めだと理解せず
火をいじると寝小便するものだと思い込んでいた。
しかも、朝、寝小便に気が付いた時
これが正夢というものなのか〜!
と、感動さえした。
寝小便するぞという暗示みたいなものをかけられ、
夢に見た事柄が事実となる事をそうと思わず
事実を目が覚めた時に体感する事を正夢と小6まで勘違いしていた。
アホなガキである。